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中国は如何に「中所得国の罠(わな)」を克服するか

発表時間:2015-08-31 | 字体拡大 | 字体縮小

著者:金立群 | 出所:人民ネット

 一時期以来、中国の経済が下押し圧力が大きくなるにつれて、理論界において中国の経済についていくつかの悲観的な気持ちが現れた。中国の人口的ボーナスの減少、潜在成長率の降下という予期に基づいて、中国は「中所得国の罠」に陥ることが避けられず、持続可能な中高速成長で近い将来に高所得国の仲間入りすることができないと思う観点がさえ現れた。過去半世紀以来、確かにいくつかの経済体は中所得国となったら、長い停滞期に陥って、引き続き高所得国へ邁進することが難しくなった。しかしそれと同時に、一部の経済体は順調に中所得国から高所得国へと発展した。事実が示したように、「中所得国の罠」は宿命ではなく、克服しなければならない障害である。中国が適切に対処していけば、あまりにも悲観になる必要はないであろう。

「中所得国の罠」の内包とその実質 

「中所得国の罠」という概念は世界銀行が2006年、『東アジアの経済発展リポート』の中で最初提起したのであり、その内包は主として、一部の国が国民1人当たりの所得が3000ドルまで達したら、経済成長の停滞期に陥り、かなり長い期間において高所得国の仲間入りすることができなくなる。世界銀行の最新の定義によれば、国民1人当たりの所得は824ドル以下の国は低所得国家に属し、825ドル~3254ドルの国は中低所得国に属し、3255ドル~10064ドルの国は中高等所得国に属し、10065ドルを上回る国は高所得国家であると。アジア開発銀行(ADB)の研究によると、もしある国は中・低所得国の仲間入りしてから28年以上に中高所得の基準に達せずでいると、それが「中低所得の罠」に陥ったと考えてよい。中高所得国の仲間入りしたが、14年内に高所得国への仲間入りを達することができなかったら、「中高所得の罠」に陥ったと見なしてよい。これで測ってみれば、1950年以来新しく現れた52の中所得国の中で、すでに35ヵ国は「中所得国の罠」に引っかかって、そのうち30ヵ国は「中低所得国の罠」に陥り、5ヵ国は「中高所得国の罠」に陥った。この35ヵ国の中で、13ヵ国は中南米の国家で、11ヵ国は中東・北アフリカの国家で、6ヵ国はサハラ以南のアフリカの国家で、3ヵ国はアジアの国家(マレーシア、フィリピンとスリランカ)で、2ヵ国はヨーロッパ国家(アルバニアとルーマニア)である。その中で、一部の国家は「中所得国の罠」の中にかなり長く陥って、例えばペルー、コロンビアと南アフリカなどはすでに「中低所得国の罠」の中に60余年ものはめられ、ベネズエラも「中高所得国の罠」に陥りつつ60年を経た。これらの国と明らかに対比しているのは、他の一部の経済体は特に東アジアの新興経済体は10年足らずのうちに中所得国から高所得国への躍進を成し遂げた。これについて、世界銀行が「東アジアの奇跡」という概念を以て肯定した。 

 どうして一部の国家が比較的短期間で中所得国の段階から高所得国の段階へ移行することができたのか、大部分の中所得国においては停滞が見られ、ずるずるして「罠」を克服することができないのか。中所得の発展段階において、国家間において分化につながる原因が多くあり、人口的ボーナス、労働力の供給の伸び率、労働生産性の伸び率、経済の開放度、市場参加基準の緩和、外部環境、社会の安定度と所得分配の公平さなどが含まれている。「罠」にはめられた国々が通常次のような特徴があり、低所得、低賃金の経済体の制造業における競争力が失われただけでなく、発達している経済体とハイテク・イノベーション分野での競争を展開する能力はなかったことで、経済は安価な労働力あるいは資源・エネルギーなどの賦与自然に頼ることから高生産性指向に頼る成長パターンへ転換することができないと気付がれている。 

 実際には、「所得の罠」とはバランスが取れている状態を指し、つまり一部の1人当たりの平均所得向上を促進する要素がその役割を発揮した後、この種類の要素がある程度持続できないため、その他の制約要素がその役割を相殺し、それで1人当たり所得向上は停滞に陥っていた。異なる経済発展の段階において、経済成長の原動力・構造は異なっており、低所得段階において効果的に経済成長を促す動力要素が中所得段階において効力が失われる可能性があると物語っている。というと、中所得の段階においてみごとに成長の動力・構造の転換、発展の構造を調整することができるかどうかは、その国家が「中所得国の罠」を克服することができるかどうかの鍵となると見られている。 

中国の直面するリスクとチャンス 

1978年、改革開放を実行してから、中国の経済は高成長、高預貯金、高投資、高消耗、環境の高代価、労働集約と輸出を導きとするなどの特徴が見られ、こうした成長方式は一部の国外の学者に「持続できない成長」と称されている。新世紀以来、中国の国民1人当たり所得は急速に伸び、2000年の930ドルから2014年の7575ドルに躍進した。現在では、中国はすでに中高所得の発展段階にあり、いまだかつてなかった高所得国の仲間入りへの躍進にするチャンスに直面するとともに、「中高所得の罠」に陥る危険にも臨んでいる。中国の経済発展は新常態に入ったこと、これは趨勢的なもので周期的なものではないし、経済の急成長を促進する伝統的動力構造が弱まりつつあり、経済成長が労働力のコスト上昇、資源環境のボトルネックに差し掛かり、一部の分野において資産バブル化の傾向が現れ、投資の効率が低下し、輸出が伸び悩みなどのような一連の現実の制約がある。特に2つの既成事実である。一つは急成長から中高速成長へ転換すること、もう一つは人口の高齢化により、2012年、中国の適齢労働人口の絶対数は345万減少し、2013年と2014年にも連続減っており、当然ながら適齢労働人口数の下降から労働力供給の減少まで普通は数年間のタイムラグがあるが、中国の労働力供給がまもなくマイナス成長となることを予見することができる。経済成長の長期趨勢を分析する際、次のような公式を利用することができる。1国の潜在的経済成長率=労働生産性の伸び率+労働力供給の伸び率。イギリスエコノミスト (The Economist) 誌はすでに次のように研究をして、2001年から2008年にかけて中国の労働生産性の伸び率は11.8%、2011年から2014年にかけて7.2%となり、下降する趨勢が明らかである。労働力供給の伸び率がゼロ近くになるため、7.2%にゼロをプラスと、中国の潜在的経済成長率は7%ぐらいまで下がる推算である。労働力の減少、高齢化の加速および労働生産性の伸び率の下落は、すべて経済成長率の鈍化につながる重要な原因である。 

東アジアのみごとに「罠」を克服した経済体はすべて高齢化の加速までに高所得国に仲間入りした。前世紀後半、ヨーロッパ諸国は高齢化問題の対策に主として移民の導入により国民の人力の資本への投資を大きくするとともに、法定の定年退職年齢を引き上げるなどの対策を取る。中国の国情によれば、明らかに後者の2種類の対策を参考にすることができる。中国では現在の法定の退職年齢は低く、退職制度の調整を通じて、労働力供給の下降という不利な局面を適切に緩和することができる。中国の人力の資本の全体的資質は低くて、労働力供給の構造が不合理で、労働生産性のレベルがわりに低くて、成長率のスローダウンにつながる。2014年、中国の労働生産性は米国の20%、韓国の30%にしか相当しなかった。これから10年間、中国は「中所得の罠」を克服することができるかどうかは、労働生産性の向上がとりわけ重要である。 

如何に労働生産性を高めることについて、ここ数年来理論界で多く討議されてきた。みんなとも次のことを発見し、ある国が教育、科学技術・研究開発、インフラのなどの分野での投入は革新の促進、労働生産性の向上、産業のパタン転換・高度化の促進をするとともに、ついに「中所得の罠」を克服するうえで大きなプラス要因となる。教育と研究開発の面への投資は労働生産性と全要素の生産性の向上に転化し、経済の持続可能な発展のために新しい動力を提供することができる。ソロー・スワンモデルを含めた一連の経済学理論はすべて次のことを示しており、ある程度において、技術の進歩と労働力の資質の向上が資本と労働力の供給の増加より経済成長により重要な意義を持っている。 

現在、中国の教育支出はGDPの4%しか占めずでいるが、米国は長期にわたって5.5%前後に安定しており、韓国は5%上回り、フィンランドは更に高くて7%達している。国民全体の教育水準と労働力の資質向上がある程度人口的ボーナス減少の経済に対するマイナス影響を相殺することができる。それ以外に、中国は教育の公平を引き続き推し進めるべきである。ラテンアメリカの一部の国家では所得分配がきわめて不公平で、教育の不公平につながり、さらに社会の異なる所得層が次第に凝り固まったようになる。これは市場の競争メカニズムの形成にマイナスになるだけでなく、知識と科学技術が異なった所得層の間での拡散にもデメリットとなり、ついに全社会範囲での労働生産性の向上を妨げる。研究開発の面で、中国政府と企業の研究開発の支出はGDPの2%しか占めず、米国の3%、日本の3.4%、韓国の3.36%、フィンランドの3.84%と比較して、依然としてわりに大きく開いていると見られる。中国のような、急速に発展する大国にとって、先進国の既存技術を学ぶことで形成した後発優位は逓減しているので、経済発展は科学技術の進歩と自主イノベーションへの需要はますます大きくなる。中国経済の根本的な道筋は自主イノベーションの強化にある。一部の国家がみごとに「中所得国の罠」を克服した経験を参考にすべきで、教育と研究開発への投入を大きくし、国民の教育水準と労働力の資質を高め、自主イノベーション能力を高め、さらに労働生産性を大幅に向上させる。 

優位の発揮により、潜在能力が解き放たれ、高所得国の仲間入りをする 

リスクと挑戦を十分に認識するとともに、中国のもつ有利な条件と優位を見てとるべきである。1、適齢の労働人口がにすでにピーク達したが、50後(ウーリンホウ)、60後(リューリンホウ)の労働力はだんだん80後(パーリンホウ)、90後の労働力に取って代わられ、労働力の全体としての人力の資本の教育水準はこれからの10年に次第に増加を加速し、それによって労働力供給の下降によるマイナス影響を大いに相殺し、中国が2030年の人口ボーナスの完全消失まで高所得国の仲間入りをすることが見込まれる。2、「営業税から付加価値税へ切り替える」ことでなどの財政・租税体制の改革の推進に従って、その企業、業界の業態転換・高度化を促進する効果は現れ始めた。「営業税から付加価値税へ切り替える」ことは、第2次・第3次産業などの税額控除で税の累積を排除し、制造業のコストを下げ、科学技術・イノベーションの奨励だけではなく、第1次産業、第2次産業内部の生産的サービスのさらなる外への分離に有利であり、第三次産業の市場規模の拡大を促進するとともに、各産業間のより幅広い分業・協業と融合発展を推進し、経済成長に内生的原動力を提供する。今後の一時期、こうした効果はいっそう発揮されることが明らかである。3、ここ数年金融体制改革の深化、特に資本市場の改革は、金融が研究開発・イノベーションと資源配置の合理化により大きく役割を発揮するよう推し進めることに役立つ。4、立ち後れる過剰生産能力を淘汰するという国家の関連政策に迫られて企業がパターン転換・グレードアップに努めている。5、国際金融危機以来のインフラへの大規模な投資が経済全体効率に対するプラスのスピルオーバー効果(溢出効果)はこれからの10年に次第現れ、潜在成長率の向上にいっそう寄与するであろう。 

当然ながら、潜在成長率は自ら実質的成長へ転化することはありえない。この潜在的能力を現実化するには、必ず改革により障害を一掃しなければならない。教育と研究開発への投入を増やすほか、政府は次のような幾つの面で積極的に役割を発揮するべきであり、1、戸籍制度の改革を加速し、都市化のレベルを高め、労働力市場における都市と農村の分割を打ち破り、労働力が生産性のより低い農業部門から工業とサービス業部門への移転を推し進める。世界を見渡して、みごとに「中所得国の罠」を克服した国家はすべて都市と農村の構造において根本的な転換を実現し、工業化、都市化と農業の現代化の歴史的任務を達成し、農業の労働生産性は社会全体の労働生産性に追いつき、都市と農村住民の1人当たりの平均所得レベルは大体相当するようになった。2、知的所有権に対する保護に力を入れる。イノベーションの主体は企業であり、イノベーションの土壌は構造と環境である。政府は企業のために革新の環境と制度的保障を提供すべきで、大衆による起業・革新を激励する。その外、たゆむことなく腐敗に反対し、官吏の公務執行を整頓する必要があり、行政機能の転換を加速させ、特に法律に基く国家統治ガバナンスの全面的推進を通じて、企業の法治化経営環境を構築する。 

要するに、党の18回大会と第18期3全会、第18期4回全会が布石した改革と発展の任務を貫徹・実行し、東アジアの成功した経済体の追かけした経験を合理的に参考にしさえすれば、中国必ずこれからの10年間引き続き中高速成長を維持し、「中所得国の罠」を克服し、みごとに高所得国の仲間入りするであろう。 

「作者、アジアインフラ投資銀行(AIIB)多国間臨時事務局事務総長) 

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