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県と郷における財政難への処方箋

発表時間:2012-09-24 | 字体拡大 | 字体縮小

著者:清華大学 劉玲玲 張凱雲 程子建 | 出所:

  一、県、郷政府の財政難の原因

   1.脆弱な経済基盤、単一な経済構造、税収源の不足が背景にある

  近年、甘粛省の経済は、比較的速いスピードで発展し、総合力も明らかに増している。但し、経済基盤が脆弱で、財政収入が不足し、また収入増加も他地域と比べ後れをとっている。

  甘粛省の県、郷のレベルの経済基盤を見ると、農業の比重が依然として高く、自然災害や市場リスクに対する抵抗力も弱い。省の財政収入を産業構造から見ると、第二次産業、特に国有企業からの収入が大部分を占めている。しかし、この数年間、国有企業は生産・経営の上で多くの困難に直面しており、効率、利益、体力とも明らかに低下していることから、財政収入の伸びは限られている。一部の県・市の工業部門は、集体企業が中心であり、企業規模が小さいため利潤を上げにくい。このため、財政への貢献度は低く、安定的な税収源ではない。潜在的な成長性を持つ一部の民営企業は、政府による政策支援を得られないため、企業規模を拡大できないでいる。甘粛省では、内需が不足し、第三次産業の発展も鈍いため、郷・鎮政府は充分な財源を持つことが難しく、企業誘致も非常に困難である。同省には、豊富な観光資源が存在するものの、交通の便が悪いといった理由から、新たに伸びてゆく財源とはなり難く、必要とされる財政収入増加にはつながらない。

  また、最近、上級政府は、財政投入を大幅に減らしている。第一に、国は、県、郷両レベル政府の計画に含まれるインフラ投資を大幅に減少させた。第二に、国有商業銀行の県、郷政府への融資も大幅に減少した。第三に、財政の運転資金投入も停止された。県域経済の発展に必要な資金支援が十分ではなく、新たな税収源を作り出せないことが、県、郷政府の財政難を生み出す根本的な原因である。

  2.農業税減免政策の実施により県、郷財政の収入源が減少した

  甘粛省の大部分の県、市では、農業が主たる産業である。農業は、全省のGDPの19.29%を占めており、全国平均の14%より高い。そして、農業税収入は、多くの郷・鎮政府の財政収入において最大の構成要素になっている。このため、2004年に始まった農業税減免政策は、多くの郷・鎮政府の財政収入に大きな影響を与えた。2005年からの農業税の全面廃止以降、大部分の郷・鎮政府で財源不足が大問題になっている。特に、郷鎮企業が発達していない地域への衝撃は大きい。農業税廃止後、上級政府は、地方政府への移転支出を増加したものの、移転支出の増加だけでは農業税の減少分を相殺できていない。しかも、移転支出は、すべて「定向性」支出、即ち使途が定められている支出であるため、県、郷政府にとっての自由度は非常に低くなっている。同時に、甘粛省では、長年にわたって県、郷政府の債務問題が存在しており、県、郷・鎮政府の重荷となっている。

  3.分税制のメカニズムが不完全であるため、県、郷財政にも安定的な増収メカニズムがない   

  中国の現行の財政制度においては、財政収入が上級政府に集中するメカニズムが存在する。中央財政収入が、全国財政収入に占める比率は、1993年の22%から2002年には54.9%に上昇した。これは、中央政府のマクロコントロール能力の向上に寄与しているが、中央財政の比重の上昇は、地方財政の比重の低下を意味しており、県、郷財政に一定のマイナス影響をもたらしている。1994年から実施されている分税制改革は、中央と省の財政収入と支出の関係を規範化することに着目したものであった。但し、省レベル以下の地方政府の財政制度改革についての規定は未だに明確化されていない。このため、多くの郷・鎮財政が、税収の分配関係が不明確な中で、安定的な増収メカニズムを得られずにいる。現在、分税制における共有税(訳注:中央政府と地方政府の共有税収)を見ると、例えば、増値税と企業所得税は、中央と省の間で各々75:25、60:40の比率で分配された後、省においても同様に県・市、郷・鎮間で一定の比率で分配される。そして、この比率は省レベル財政によって決定されており、より上級の政府に分配が偏る傾向が見られる。この傾向により、元々裕福でない県、郷政府の財源が、行政面からも減らされることになり、県、郷の財政・経済の発展はなおさら不安定になっている。

  4.省、市、県間の財政収入と職務の区分が不明確かつ非対称   

  財政権と職権のバランス原則に基づき、各レベルの政府の職権を科学的に明確に区分した上で、中央政府と地方政府、及び省以下の各レベルの政府間の財政の分配関係を適切に調整することは、財政制度改革の基礎であり、また、分税制改革の改善にも資する。但し、現行の財政制度の下では、財政力がより上級の政府へ集中する一方で、職務とそれに伴う支出の負担は下級政府に回され続けている。近年、県、郷両レベル政府は、義務教育、当該地域のインフラ設備、社会治安、環境保護、行政管理等の種々の地方性公共財を供給する責任を負い続けながら、地方経済の発展も一定程度サポートしてきた。しかし同時に、県、郷両レベル政府が履行する職権の大部分は、支出ベースが大きく増加も速いといった特徴を持っている。また、県、郷政府は、従来に範囲を超える職権を負わされることもある。財政力が上級政府に集中すると同時に、職権と財政権が著しくバランスを欠くことから、県、郷政府の財政負担は重くなっている。そして、県、郷財政は赤字になり、経済発展推進の責任を果たせなくなってしまったのである。

  5.地方の財政力不足を補い、地域間の発展のバランスをとるべき移転支出の機能は、未だにうまく発揮されていない   

  近年、財政の政府間移転支出(訳注:転移支付と中国語のまま訳している文献もあるが、ここではすべて移転支出とした)は増加し続けているものの、政府間移転支出制度は、科学的に計画されておらず、規範的に操作されてもいない。このため、移転支出制度は、本来の作用を発揮していない。

  まず、一般性移転支出から見ると、地方の既得利益を損なわないように導入された税収返還性移転支出の比重が大きく、真に地域経済発展の格差縮小に使われている金額は小さい。同時に、税収返還の計算方法の中に、旧税制下の非合理的な要因が残っており、それが年を追って雪だるま式に拡大している。さらに、1994年以後の分税制下でも、原体制補助性移転支出(訳注:分税制導入以前の上納・補助等の政府間の資金移動が、分税制導入以後も継続する制度)が相当残っている。

  次に、専項補助金(訳注:使途が特定されている補助金)を見ると、ほとんど全ての予算項目を含むほど種類が多く、また、その分配について、明確かつ厳格な基準が欠如しているゆえに恣意性が大きく透明性も低い。同時に、専項補助性移転支出は、通常、地方政府に一定の比率で、地方財政から見合い資金(資金のマッチング)を要求しているため、元々財政難の県、郷政府をさらに苦しくさせてしまう。プロジェクトを獲得すればするほど、必要な見合い資金が多くなるが、財政難の県、郷政府ほど資金難であるため、専項補助金の獲得がますます難しくなってしまう。多くの財政難の県、郷政府は、専項補助金を獲得するために、銀行や企業から借金せざるを得ない。これが、県、郷財政債務が生じる主因である。このような財政制度上の仕組みの結果、地域間で「富裕者はますます富み、貧困者はますます貧しくなる」現象が生じている。

  6.県、郷財政は自主権を欠く   

  不完全な地方税体系の下で、地方政府は、安定的かつある程度の規模を持つ税源を欠く。また、税収の管理権が過度に中央政府に集中する中で、地方政府は税収に関する立法権、税法の解釈権、税目・税率の調整権、税収減免権を持っていない。このため、地方政府の税収自主権は小さい。中央・上級政府は繰り返して県、郷財政の支出を増加させ、収入を減らす政策を打ち出した結果、地方財政の責任は増え、また非常に受動的立場になっている。

  7.財政資金で雇用する人員が急激に膨張し、人件費増加も加速した   

  我々の調査によると、県、郷政府は、その職務の中で政府機関の日常の行政を優先しており、財政収入の大部分が給料支払いに充てられている。県郷政府は毎年、上級政府の要求に応じて必要以上の人員を雇わなければならない。同時に、辺境地域の九年義務教育を徹底して地方の教育の質を高めるために、定員以上の教師を雇っている。結局、財政で養う人口は増え続けており、経費も増加し続けている。ここ数年間、甘粛省は郷鎮政府を整理し始め機構の簡素化を進めているものの、大部分の地域は経済発展が遅れているため職場が少なく、政府は再就職対策を実施し難い。機構簡素化のため配置転換された人員が下級の政府に配属されることも多く、統廃合で郷鎮の数は減少しているものの、財政による人件費負担は軽減していない。

  二、県、郷財政難の解決の構想と対策   

  県、郷財政問題の解決の鍵は、県地域の経済を発展させ、地方政府の税収源を強化することである。県、郷財政の問題を緩和するためには、省以下の各レベルの政府の財政制度改革を推進することが重要である。具体的には、中央と各レベルの地方政府の職権と財政権の配分構造を調整し、また、積極的に税収源を創出する。さらに、県、郷の機構改革を加速し、政府の業務効率を向上させる。合理的な発展計画を企画し、地方債務を効果的に処理する一方、基礎教育投資に力を入れ、県、郷の長期的な発展のための良好な基礎を築く対策も挙げられる。

  1.各地方に適した方法で、県郷地域経済を発展させ、財源を創出・強化することで、県、郷財政の問題を根本的に解決する

  我々の調査によれば、経済発展の良好な地方では、民営経済の発展が比較的速く、また、税収源が豊かな地方では、経済発展における地方政府の役割がうまく発揮されている。つまり、強い県と強い財政を形成するには、県地域の経済発展が必須であると言える。甘粛省の場合、県地域の経済を発展させるためには、政策、資金、行政サービスなどの方面から民営経済の発展を強くサポートする必要があると考えられる。(1)民営企業が、買収・合併・持株支配・リースなど様々な形式で国有・集体企業改革へ参入することサポートする。また、民営企業家の創業を奨励し、一定の税収優遇政策を与えることで、県及び県以下の中小民営企業の発展を促進する。(2)生産要素を重点企業へ集中させ、資産のリストラを推進し、県地域の工業を新型工業へ導く。県の国有企業の制度改革を奨励し、外からの資金導入や民営化といった方法を利用する。(3)県経済発展における比較優位を利用し、各地の特色を持つ支柱産業をサポートする。例えば、合作市、夏河県などの地域は畜産業を、甘州区、渭源県などの地域はトウモロコシ、ジャガイモ、育種など特色のある農業を発展させる。特に、甘粛省は文化財が多く、文化財を有する数多くの観光地がある。インフラ建設への投入を強化することで観光業を発展させ、旅行関連産業、特に第三次産業の発展も推進する。(4)農村の経済構造を調整し、農産品加工における付加価値を増加させ、農産品の商品化を実現する。(5)小都市を科学的に配置する。いくつかの小都市が県地域経済の中で先頭に立って模範となることで県経済の発展を促進する。

  2.政府の職務を転換し、職権を合理的に定める   

  現在、中国が推進する中央・地方の公共財政の構築は、現代政府を新たに樹立し、管理型政府からサービス型政府への転換を実現する革命である。公共財政構築のためには、中央政府と地方政府間、及び各レベルの地方政府間の職権範囲を明確化し、職権配分におけるミスマッチや過不足の問題を解決すべきである。そして、各レベル政府の職権と財政権を統一し、政府の職務の履行を確実なものにする。県、郷政府はやみくもに「自己の役割」を拡大すべきではなく、市場経済の規準を利用し一連の科学的な規範を作り、制度の創新・情報サービス・全体の企画・社会保障などのサービスを通じて、県地域経済に対して、良好な競争環境と社会の調和的発展のための環境を提供すべきである。

  現行の財政制度の下では、全社会的な利益に関するもので外部経済性の大きい事務は、中央財政が統一的に負担するか、或は中央財政が専項補助金を支出し地方政府が相応の見合い資金を提供する方法で実施されている。例としては、農牧業の「防疫システム」の確立及び全国的な重大伝染病の防疫、地域にまたがる大河川の管理、全国的な生態環境の保護、農村の医療制度の構築などの重大プロジェクトが挙げられる。

  一方、地方政府は主に地方の行政管理、義務教育、医療衛生、都市建設、水道、治安、消防、環境保護、地方公共プロジェクトなどの支出を負担する。省政府は、大型、長期間で、市と県に跨り、優れた生産力の配置をもたらし、省経済の発展力増強に重大な意義と戦略性を持つ投資プロジェクトに、一定程度参画し、持株支配、資本参加及びその他の経済手段でプロジェクトを牽引すべきである。

  市、県政府は一般的な競争分野から撤退し、その投資を公共プロジェクト、インフラ建設、公益性投資プロジェクトに集中させて、商業的な投資は行わない。同時に、県、郷政府は行政管理、義務教育、県郷道路などの公共プロジェクト及び社会保障などの職務を負担することに加えて、民営経済の発展をサポートすべきである。民営経済に情報、組織、融資などのサービスを提供することで、民営経済・第三次産業の発展を促進し、雇用を増加させ税収源を拡大するのである。各レベルの政府への合理的な分権を通じて職権を明確にすることで、はじめて職権のミスマッチ・重複を回避し、職権と財政権をバランスさせ、県郷政府が現在かかえる財政難を緩和することができる。

  3.地方税制を改善する   

  中央政府への税収権限の適度な集中を保証した上で、省政府に一定の税収自主権を授けるべきである。地域性が強く、全体の経済発展や分配構成に影響を与えない地方税収の管理権限は地方へ委譲し、地方税源の拡大を通じて、地方財政力を強化するのである。同時に、県、郷財政は税収規模によって異なった分税制を実行すべきである。具体的には、税収規模が比較的大きい税(営業税、企業所得税、個人所得税など)は県レベル以上の財政が管理し、税収の基礎が比較的に穏定であり、県市地域の特色の濃い中規模の税収(例えば、資源税など)は上級財政と県郷財政が共有し、規模が比較的小さい、或は税収規模が不安定で、郷鎮の地域色の濃い税収(例えば、契約税、耕地占用税など)は県、郷財政が管理することが考えられる。また、将来、財産税の改革に伴って徴収され始める住民の商業不動産に対する不動産税や遺産税といった類の税収も、県郷財政に納税されるべきである。

  4.移転支出制度の改善   

  1994年に実行された分税制改革は、中央財政の全国財政収入における比重を高め、中央政府のマクロコントロール能力を強化することに力を入れた。この体制の下で既に10年以上が経過しており、再び財政制度改革の重大課題として、中央と地方の利益分配関係を適切に調整し、中央政府のマクロコントロール能力を確かなものとし、また、地方の積極性を十分に発揮させ、県、郷財政難を適切に解決することが求められている。ここで、移転支出制度を改善するためには、以下の点に力を入れるべきである。

  (1)立法措置により中央政府と地方政府の職権と財政権を明確にする。例えば、中央政府は主に全国的な行政管理、国防、外交、重大公共プロジェクト、中央が行う科学、教育、文化、衛生事業、マクロコントロールの実施などの公共支出を負担する。地方政府は、中央が制定した各政策法規を執行し、地域内の正常な社会秩序を維持し、地方性のある純公共財と準公共財を提供する。同時に、地方人民代表大会と地方政府に税収についての立法参与権、及び地方税制の構築に関する決定権と管理権限を一定の範囲で適切に付与する。

  (2)財政移転支出制度は、公共サービス能力を均等化する長期目標と最低基準の公共サービス(ナショナル・ミニマム)を保証する短期目標を、正しくかみ合わせなければならない。中央対省、省対市県、県対郷からなる多レベル・相互連関の交付システムを構築する。移転支払いの推計公式を合理的に作り、短期的には現行の税収返還体制を維持する前提の下で、中央から地方への一般性補助金を適切に増加させ、地方政府の一般的な行政管理能力不足の問題を重点的に解決し、県郷財政難を緩和する。中央の共有税収入の増分から一定の比率の資金を捻出し、その財源に充てる。ここで、この増分はルールにより配分され、配分案の透明度、公正度、予見性を高めることで、移転支出における恣意性を大きく減らせる。長期的な目標は、税収返還、体制補助、決済補助に含まれるすべての移転支出資金をルールに基づいて配分し、各地の公共サービス能力を均等化することである。

  (3)各種移転支出の形式を規範化する。支出の性質に応じて、合理的に分類し、中央の地方に対する専項補助性移転支出の範囲を新たに定義し直す。専項補助性移転支出は主に2種類、即ち専項補助と特殊災害補助に分けるべきである。専項補助は、既定の公共財の供給レベルを増加させる機能を持ち、基礎教育、公共衛生保健、社会保障、環境保護、社会治安、交通条件などの項目をカバーする。特殊災害補助は、自然災害に対する防災や災害復興のための補助である。

  専項補助においては、第一類、つまり、中央職権の範囲であるが、効率の点から地方が下請けするプロジェクトの場合、必要な経費は中央が負担すべきである。第二類、つまり中央と地方の共同職権範囲のプロジェクトでは、受益範囲の大小によって中央・地方間の分担比率を確定し、地方に対する対称的専項補助を確定する。第三類、つまり地方職権の範囲に属しているが、政府目標達成などの観点から中央政府がある程度奨励・支持するプロジェクトの場合、中央政府は特殊要因を考慮して非対称性専項支出を交付する。地方政府に見合い資金の提供を求める場合、各地域の資金提供比率は一律に規定されるのではなく、一人当りの財政力に応じて決定されるべきである。

  (4)移転支出に関する法律・監督メカニズムを構築する。財政関連の法律・監督は財政管理上重要である。また、違法行為の処罰は法律・法規の実施の徹底と財政秩序の維持の上で重要である。財政移転支出に関する立法作業を早急に完成させ、行政機関と公務員の法律上の責任を明確にすべきである。この法律責任には、行政法、民事法、刑事法上の責任が含まれる。同時に、移転支出の執行過程において、財政支出の成果・効果に関する審査制度を導入し、登録会計士を通じて一般性補助、専項補助、特殊災害補助資金の使用成果を評価・監査すべきである。また、審査制度を通じて、政府間移転支出の監査・監督を強化すべきである。同時に、法律に従って、移転支出制度の組織管理を改善する。移転支出の公正性、民主性、権威性などを保証するために、専門の管理機関を設立し、移転支出関連の事項を管理すべきである。具体的な組織機構、つまり移転支出専業委員会は全国人民大会財政経済委員会に属し、委員は各省の代表と専門家により組成される。その任務の重点は、基本原則の制定、計画の立案、資金源、推計方法の選択、交付金額の確定、移転支出の監督と成果の評価及び具体的な業務プロセスなどに置かれる。専門委員会は財政部と共同で定期的に一般性補助、専項補助、特殊災害補助案についての聴聞会を開き、法定プロセスによって移転支出の公示を行う。財政部が提出した移転支出案は専門委員会で審査された後に実施されることになる。同時に、移転支出法により、同専門委員会の権限、職務、業務プロセス及びそれに対する監督のメカニズムなどが具体的に規定される。

  (5)各種の関連法規を改善し、財政移転支出法と「予算法」、「農業法」、「計画出産法」、「教育法」、「科学技術法」などの法律を適切に関連させる。同時に、移転支出法には、下級政府が上級政府の移転支出行為について、法に基づき訴訟できる条項も含まれる。政府間で訴訟が無い局面を打開し、中国の民主法制の確立を促して、地方政府の移転支出政策決定への参与と管理権限を拡大する。

  (6)同レベルの政府間での水平的な移転支出制度の実験を適時に実施する。ドイツでは水平的な移転支出が比較的成功している。長期的発展の観点から見ると、中国は現在の単一な垂直的移転支出モデルを、垂直的移転支出を主とし、水平的移転支出がそれを補う縦横型の移転支出のメカニズムに改変すべきである。近年、中国各地間の財政力格差は拡大しており、発達した地域は水平的な移転支出を実施する能力を持っている。また、東部の省市と中西部の省市を結びつけるという、中央政府が推進している活動は、地域間の水平的移転支出の性格を明らかに持つものである。また、中国の特定な国情を考慮した上で、地域間の経済協力を奨励すべきである。例えば、発達した省市間の「強強連合」、発達した省市と未発達の省市間の「強弱連合」、「弱・弱連合」などの経済協力や資源開発は、すべて水平的移転支出である。地域間の経済協力と利益補助メカニズムを積極的に探索し、経験を積み重ねた後で、制度化及び法制化しなければならない。
  5.県、郷政府機構改革を継続し、財政面での圧力を減らし、政府の効率を高める   

  役割が既に薄れており、重複している部門と機関については、撤廃・合併などの整理が必要である。また、競争性業界に属する部門は早期に行政から分離すべきである。様々な方法で政府機関の幹部・職員を再就職させ、財政で雇用する人口を極力減らす。継続的に政府機関を簡素化し、政府機関の編制も厳格にコントロールすることで、財政資金による雇用の比率を低下させる。また、総合的な措置によって、県、郷政府の人員、事務、支出を減らし、政府の運営コストを低下させる。また、政府の業務効率を高め、同時に地方公務員募集制度をさらに規範化して実施する。

  6.地方債務問題を適切に解決できるメカニズムを構築する   

  財政負担を合理的に分散し、各レベル政府で財政赤字を消化し、地方財政のリスクを低下させるために、中央政府は地方財政債務の処理に関する政策を早急に制定すべきである。第一に、食糧補助政策(訳注:中央・地方財政による食糧型企業への補助など)により生じた損失のうち、県レベル財政が補助できない部分を審査の上、財政資金により処理する。第二に、財政による運転資金融資(訳注:地方政府の国有企業向け融資、中央政府の地方政府向け融資など)の貸し倒れ部分に対しても同様に処理する。第三に、中央、地方政府が、農村の不良債権問題を解決する。特に、農村信用合作社の貸し倒れ部分については、何回かに分けて補填し、農村社会の安定と経済の持続的な発展を維持する。一方で、地方政府も県、郷政府の債務の解決に努力しなければならない。新たな債務増加を厳格に抑制すると同時に、競売、リースなどの方式で地方政府の資産・資源を有効に活かす。また、債権債務の置換(訳注:地方政府が土地使用権等の資産を利用して、銀行等からの借り入れを返済する)、県鎮企業の所有制度の変更、破産、資産リストラを通じて、県郷債務を部分的に返済する。各地方政府債務の解決に新たな創造的な空間を与え、県郷政府の積極性を向上させる。一方、上級政府が負担を地方に転嫁すること、或いは「上級政府が政策を指示し、下級政府が資金を出す」ことによって生じた債務については、上級政府が県、郷政府に必要な資金を補助すべきである。

  7.基礎教育面への資源投入を拡大する   

  教育、特に基礎教育は、政府が供給する外部経済性を持つ公共財である。公共財の分類上、基礎教育は純粋な公共財であり、国家と民族の長期的な発展及び国民の素質向上に密接に関係している。このため、主に中央と省レベルの財政における専項移転支出を通じて、その支出を保証すべきである。特に、教育の不足している地域では、地方経済が悪循環に陥らないようにし、また、経済発展の基礎となる労働力を提供するために、非識字者を無くすべきであり、中央財政は、遅れた地域の基礎教育の発展をサポートし、基礎教育投資を主に地方政府が負担している現状を改善すべきである。遅れた地域の基礎教育の支出は、県郷財政支出から分離し、上級財政が統一的に管理すべきである。これによって、県、郷財政の負担は大幅に減少し、限りのある財源を基本的な行政、社会保障及び県郷道路、小型水利プロジェクトなどの基本公共プロジェクト支出に充てることが可能になり、県域経済の振興・合理的な資源の利用・持続可能な経済発展の実現に必要な物的基礎を固めることができる。

  8.行政区分を適切に調節し、政府・財政レベルを合理的に確定する   

  憲法の規定によると、中国の政府組織は中央、省(及び自治区、直轄市)、地(及び州、区を設立する市)、県(及び区のない市)、郷(及び鎮、民族郷)の五段階に分かれる。また、予算法によって、各政府レベルにそれぞれ予算が対応する制度(「一級政府一級予算制度」)が規定されている。この五級政府の設置は、基本的に中国の伝統的な農業社会の政府モデルを踏襲している。しかし、グローバル化と情報化の発展にともない、五級政府の階層数は多すぎることが明らかになってきた。このため、憲法面から、各政府レベルと各財政レベルを合理的に確定し、政府構造をフラット化する必要がある。第一に、憲法を修正して政府のレベル数を削減する。郷レベル政府を県レベル政府の出先機関に変更し、郷レベルの共産党委員会・人民代表大会・政協連絡チームなど一連の機関と人員編成を削減する。第二に、省レベル政府の規模を徐々に拡大し、地レベルの市、県(及び県レベルの市)レベルの政府規模を縮小する。また、地レベルの市政府が県(市)政府を管轄する職務をなくし、省レベル政府が地レベルの市と県(市)を統括管理する体制を施行し、それに対応して、財政のレベル数も調整する。政府・財政レベルを中央、省、市(県)の三つのレベルと二つの半レベル(地レベルと郷レベルは出先機関レベルとされる)に削減できれば、通常の市場経済国家の状況に近くなる。こうすれば、各レベル政府の職権と財政権をはっきりさせ、各レベル政府の支出責任を明確にすることに役立ち、また、現在、県、郷財政が直面している困難の解決にも資する。

  国資委は、国有資産管理体制の抜本的な変革の実現という歴史的使命を背負っている。国有企業を大きく強くするという考え方を持ち続ければ、「国退民進」の方針と中国の経済発展モデルの転換を妨げ、社会主義市場経済の発展を阻害する。国資委は、国有資産の管理・運用の仕方を企業の経営から資産の経営に変え、現在の国有企業、特に一般競争分野にある国有企業について政府・企業の分離と非国有化を実現せねばならない。

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